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介護の相談先が住所でわかるサイト『ケアどこ』を作った

川崎市・横浜市の介護情報サイト「ケアどこ」を作ってみた。

■背景と目的

  • 「こすぎナビ」の課題に「介護施設のデータも載せたい」と書いたが、調べていくうちに施設一覧よりも手前に穴があると分かった
  • 介護保険の最初の窓口は地域包括支援センターで、担当は住んでいる町名で決まる。ところが川崎市はその担当地区表を画像化されたPDFでしか公開しておらず、検索もコピーもできない
  • 横浜市も同様にPDF。しかも町によっては丁目で担当が分かれるため、PDFを目で追って自分の町名を探すことになる
  • 「親の介護が急に始まった」という状況で最初にやることが、PDFを拡大して町名を探す作業になっているのは筋が悪い
  • 制度も窓口も市によって違うため、URLの第1階層をエリアにして積み上げられる構成を試したかった

■対象

  • 川崎市・横浜市に住む親を持つ、主に40〜60代の家族
  • 遠方に住んでいて、帰省のたびに手続きを進めるような人
  • 日本語で行政情報を読むのが難しい家族(解説ページは日英対応)

■主な機能

  • 町名から担当窓口を引く検索:971町名・1,134件の担当地区データを持ち、丁目で分かれる地域にも対応。表記ゆれ(井土ケ谷/井土ヶ谷、旭が丘/旭ケ丘、滝之上/滝ノ上)を吸収して突き合わせる
  • 地域包括支援センター187か所の詳細(連絡先・担当地区・地図)
  • 介護事業所3,401件を9種別×25区で検索(特養・老健・グループホーム・有料・デイサービス・訪問介護・福祉用具レンタル・ショートステイ2種)
  • 手続きガイド31本:要介護認定の申請、特養の申込み、住宅改修、福祉用具、支給限度額、介護保険料、介護休業、成年後見、免許返納、看取りと死後の手続きなど
  • 在宅で使える助成14本(紙おむつ給付、緊急通報システム、敬老パスなど市ごとの制度)
  • 流れ図6種(要介護認定・認知症・住宅改修・特養申込み・福祉用具・死後の手続き)
  • 認知症の読み物、介護の基本クイズ、用語集16語

■技術構成

  • batch(Python):厚生労働省のオープンデータ、市の公開ページ、担当地区PDFを取得してMySQLへ。PDFのパーサは市ごとに別実装
  • web(Astro):ビルド時にDBをJSONへ書き出し、そのJSONから4,938ページを生成。ビルド自体はDBに依存しないので、どこでも走りデータの変化がgitの差分として見える
  • 地図はMapLibre GL JS + 国土地理院タイル。3,000件超はHTMLマーカーでクラスタリング
  • S3 + CloudFront(OAC)。URLの正規化はCloudFront Functionで行い、S3の静的ウェブサイトホスティングは使わない(使うと全ページが302になり、canonicalと実URLが食い違う)
  • デプロイはバッチファイル1つで「ビルド→3段階のキャッシュ設定でS3同期→CloudFront無効化」まで

■所感

  • 一番時間を使ったのは機能ではなく正確さの担保だった。介護は健康とお金に関わる領域で、間違いがそのまま家族の判断を狂わせる。全ページに出典URLと最終確認日を出す方針にした
  • 「介護保険でGPSが借りられる」と書きかけて止めた場面があった。福祉用具の品目に「認知症老人徘徊感知機器」があるので借りられそうに読めるが、この品目が指すのは本来センサー型で、GPS対応は改正が進行中・施行日未定だった。厚労省の検討会資料まで当たって気づいた。出典を貼る運用にしていなければ、そのまま公開していた
  • 逆に「載せない」判断も何度かした。調べた市の支援制度のうち4件は既に終了していたので、見つけたが載せていない。終了した制度が検索で出てくるのは、無いより悪い
  • 出典の名乗りを3か所で間違えた。免許返納の出典は神奈川県警、権利擁護は社会福祉協議会なのに、全部「市」と表示していた。判定を1か所に集約して直した
  • 町名データの正規化では、崩れたデータを33件見つけた。「14〜19番」「【分室】つなしま相談室」といった行が町名として登録されていて、正規化のキー衝突を数えるチェックを書いたことで発覚した
  • 日英で同じ構成を保つため、文言だけを言語で切り替える形にした。別コンポーネントに分けると、片方を直したときにもう片方が静かにずれる

■課題

  • 公開したばかりでアクセスはこれから。4,938ページをクロールしてもらうのにも時間がかかる
  • 構造的な弱さが1つある。集客できるページとお金になるページが別だということ。971の町名ページは大手が作らないので検索で戦えるが、来た人は電話番号を控えて帰る。逆に3,401件の事業所ページは商業的な意図が濃いが、中身は厚生労働省のオープンデータそのままで、大手ポータルと同一データでの勝負になる
  • 勝ち目があるのは手続きガイドだと考えている。「川崎市の要介護認定はどの課に出すのか」を出典と確認日つきで書く面は、大手が市ごとには作らないし、作っても更新しない
  • 相模原市の追加は調査済みだが保留にした。事業所データは既に手元にあるが、担当地区が番地レベルで分かれており、町名の23%が複数のセンターにまたがる。「担当はここです」と言い切れない割合が高すぎる
  • 取り込んでいるサービス種別は35種のうち9種。訪問看護・小規模多機能・定期巡回は在宅の限界を上げるサービスなので入れたいが、ページ数が増えるだけになる可能性もあり、アクセスの傾向を見てから判断する